過去の法話
彼岸会
(令和4年 3月の法話)
弥生三月は、別れ、旅立ちの季節です。
下旬には、春分の日を中心とする一週間、
彼岸会が営まれます。
彼岸会にこぞって墓参りをするのは
日本仏教独特の習慣です。
彼岸は直訳すれば「彼方の岸」、つまり「さとり世界」。
対するこちらの岸は、私たちがいる俗世間で
「此岸(しがん)」と呼ばれています。
法要として営まれるようになった理由は
様々に論じられていますが、
昼と夜の時間がちょうど同じになるという太陽の運行と、
阿弥陀如来の仏国土がある真西の方向に
太陽が沈むことと関係づけられることもあります。
日本では『日本後紀』
延暦二十五年二月の条に桓武天皇の実弟で
非業の死を遂げた早良親王の霊を沈めるために
「毎年春分と秋分を中心とした前後七日間
『金剛般若波羅密多経』を転読させた」ことが初見とされます。
自然の変化と相まった彼岸会が、
亡き人を思い浮かべ御霊の安からんことを祈る仏事として、
日本仏教の大切な柱となっていることが分かります。