過去の法話
捨心
(平成30年 6月の法話)
夏雲奇峰のとき。
梅雨の晴れ間が恋しい季節です。
日差しや雨がすべて平等に注ぐように、
仏教もこだわりを捨てて平静に生きよと教えます。
これを「捨心」といいます。
捨心は慈悲喜捨の四無量心のひとつ。
生きとし生けるものを慈しむ「慈心」と憐れみの「悲心」と、
そして分かち合いの「喜心」と、
こだわりのない平静な「捨身」です。
禅には「忘筌」という教えがあります。
「筌」とは魚を捕るカゴのこと。
魚<目的>を捕まえたら、カゴ<手段>は忘れなさいという戒めです。
どんなに大切な道具でも、あくまでも大切なのは魚。
人は一生懸命のあまり、目的と手段をはき違えてしまうものです。
運動が過ぎて健康を害したり、
お金のために家族や生活をおろそかにしたり……。
そんなかたよりやすい心から、
捨心は大切なものを取り戻してくれるのです。